久留米大学病院の核医学・PETセンターは、医学部臨床研究棟の東隣に位置して放射性同位元素施設(RI施設)の二階にあります。放射性同位元素はラジオアイソトープ(radioisotope)と同じ意味でRIと略して呼ばれることがあります。病院本館や総合診療棟からは離れておりますので、受診される方に対して病院内の各所に案内板を設けさせて頂いております。また、当センター受付横の待合室には、ウォーターサーバーを設置しておりますのでご自由にご利用いただけます。
核医学検査装置に関しては、令和元年5月現在でSPECT/CT装置一台、SPECT装置二台、PET/CT装置一台が稼働しています。PET/CT装置は平成30年度に導入された新型の検査装置であり、PET装置内部には半導体検出器が新たに組み込まれていますので、高感度で高分解能のPET/CT画像が実現されています。従来の検査装置と比べますと、検査時間は短縮しており病変の検出能も高くなっています。
核医学画像の作成は専従の放射線技師により適切に行われ、核医学画像の診断は核医学専門医、PET核医学認定医、放射線診断専門医を有する医師によって行われています。また、専属の看護師も常在しており、多くの医療スタッフと連携して受診者の皆様のサポートをさせていただいております。ご不明な点は何なりと最寄りの医療スタッフにお尋ねください。
核医学治療では、平成29年7月より骨転移を有する去勢抵抗性前立腺癌に対するゾーフィゴ®静注を用いたRI内用療法を主に行っております。
核医学検査
核医学検査は、放射性医薬品(放射性薬剤)を体内に投与して、体内から放出されるγ-線(ガンマ線)を検出する検査です。そのγ-線の分布を測定、画像化することにより生体内での代謝や機能状況を診断することが可能になります。
当院では、骨転移や関節リウマチなどの骨・関節病変を調べる骨シンチグラフィ、全身の炎症や腫瘍の部位を調べるガリウムシンチグラフィ、虚血性心疾患や生存心筋等を調べる心筋シンチグラフィ、脳血流の分布を調べる脳血流シンチグラフィ、分腎機能を調べる腎シンチシンチグラフィ(レノグラム)などを行っています。
シンチグラフィの検査には、ガンマカメラを搭載したSPECT装置やSPECT/CT装置が使用されます。SPECTとはSingle Photon Emission Computed Tomography: 単光子放射断層撮影を意味します。この検査法は、シンチグラフィの断層像(横断像、冠状断像、矢状断像)を得ることができますので、病変部位の評価に有用です。さらに、SPECT/CT装置はSPECT装置とX線CT装置と一体型になっていますので、SPECT画像と形態情報を持つCT画像との重ね合わせが可能であり、SPECTに比べて飛躍的に診断能が向上します。
ガリウムシンチグラフィ
不明熱の症例です。腹部正面像やSPECT横断像で異常集積(赤矢印)を認めますが、病変部位の同定は困難です。SPECT/CTでは膵臓付近に異常集積(黄矢印)を確認することができ、不明熱の原因が明らかになりました。このようにSPECT/CTは病変の位置確認に非常に有用です。
PET/CT検査
PETとはPositron Emission Tomographyの略語で、陽電子放出断層撮影を意味します。18F-FDG PET検査は放射性医薬品である18F-FDG(18F-フルオロデオキシグルコース)とPET装置を用いて行われ、癌診療によく使われている検査法の一つです。
18F-FDGはPET核種である18F (フッ素)で標識した糖類似体で、糖代謝が亢進している癌細胞に多く取り込まれる性質があります。癌細胞に取り込まれた18F-FDGから放出される放射線を体外のPET装置で検出し、画像表示を行って病変の同定を行うのが18F-FDG PET検査です。PET検査により病変部位の位置や広がりを観察することが可能になります。
PET/CT装置はPET装置とX線CT装置が一体型となった検査機器です。PET/CT検査はPETとCTを一度に行うことができますので、時間的、空間的ずれを最小限に抑え、代謝画像(PET画像)と形態画像(CT画像)を重ね合わせて表示することにより、病変の同定を正確に診断できます。
保険適用につきましては、平成22年4月からPETおよびPET/CTによる悪性腫瘍の診断に対して、すべての悪性腫瘍(早期胃癌を除く)の病期診断や再発・転移診断に適用されるようになっています。また、治療後の効果判定におきましては悪性リンパ腫にかぎり保険適用が認められております。
食道癌の症例です。食道の病変部位に異常集積(黄矢印)を認めます。また、腫大した右鎖骨上リンパ節や腹部リンパ節に異常集積(青矢印)を認め、食道癌による多発リンパ節転移と診断できます。
悪性リンパ腫の症例です。化学療法の前後の画像を提示しています。治療前のPET画像では全身の多数の腫大したリンパ節に異常集積を認め、病巣の拡がりを診断することができます。一方、治療後の画像では腫大したリンパ節は縮小して、異常集積も消失しています。PET画像上、完全寛解と診断することができます。
当院では院内のみならず院外からも多くの患者さんのご紹介を頂いております。また、人間ドックと連携したPET/CT検診も適宜行っております。検査予約はすべて電話予約となっていますので、お申し込みやお問い合わせは、フリーダイヤル0120-36-9849をご利用ください。詳細は久留米大学病院PETセンターのホームページ(http://www.hosp.kurume-u.ac.jp/pet/)でもご案内しております。
放射性同位元素内用療法(RI内用療法)
RI内用療法では、経口もしくは経静脈的に投与された放射性医薬品が病巣に選択的に取り込まれ、そこから放出された放射線(アルファ線やベータ線)により治療を行います。また、放出される放射線の飛程は短いため、病巣以外の正常組織への放射線の影響が少ないこともこの治療法の特徴です。
ゾーフィゴ®静注、一般名:塩化ラジウム223 (223Ra)は内用療法として使用されます。放射性薬剤であるゾーフィゴ®静注は、アルファ線を放出することにより骨転移に対して抗腫瘍効果を有します。ラジウムはカルシウムと同族元素であり、選択的に骨の転移巣に取り込まれる性質を利用しています。
適応疾患は、骨転移を有する去勢抵抗性前立腺癌に限定されており、本薬剤は患者さんの予後と病的骨折などの骨関連事象の改善に寄与することが、臨床研究において示されています。ゾーフィゴ®につきましては、ホームページ(https://www.xofigo.jp/ja/patients/)に詳しく解説されていますのでご参照ください。