■ 新治療法 ■
五十肩(肩関節周囲炎)による慢性疼痛に対するカテーテル治療
疾患の背景
五十肩とは肩関節の障害によるものです。運動器の慢性疼痛の一種であり成人の22.5%に認められると言われています。治療を受けているにも関わらず、改善しない疼痛を保存療法に抵抗する慢性疼痛と表現します。日常生活に負担をかけるほど強い痛み症状がある場合には、追加的な治療が必要になります。
五十肩の慢性疼痛治療の現状
運動器の慢性疼痛への治療法は、保存的治療(薬物療法,理学療法)や手術療法が従来から行われています。薬物療法には、消炎鎮痛剤や神経障害を改善する薬など症状改善のための薬剤が用いられています。理学療法は全身の主に筋肉の緊張や姿勢などにアプローチすることで、疼痛症状を改善させることを目的として広く行われています。
ただし、これらの一般的な保存的治療では「満足に改善しなかった」と答える人が7割以上に上ることがアンケート研究の結果から判明しています。手術療法は疼痛の原因となっている組織にメスを入れて取り除くことが基本となります。手術は、一部の方法を除いて全身麻酔下で行われます。
慢性疼痛に対するカテーテル治療
IVR(インターベンショナルラジオロジー:画像下治療)という手技を用いて行います。本治療は動脈内にカテーテルを挿入し、X線透視下に血管造影装置を用いて施行します。関節部の慢性疼痛への治療法は、2012年に本邦で奥野祐次医師(現オクノクリニック院長、https://okuno-y-clinic.com/)によって行われたのが最初で、以後、数多くの方々がこの治療を受けています。奥野祐次医師のHPも参照ください。
なぜ、痛みが生じるのか。なぜカテーテル治療は効果があるのか。
肩などの関節痛の患者さんに血管造影で検査すると、痛みのある部位に一致して細かく枝分かれした多数の新生血管が存在することが、最近の研究で判明しました。新生血管が増える原因は、炎症が引き金になっていると考えられています。多数の新生血管が増えることにより、血管と伴走する(血管と並んで)神経も増えることが、さらなる研究により解明されました。この増えた神経が、辛い慢性の痛みの原因です。カテーテル治療は、この異常に新生した血管を塞栓(潰す)ことで、併走する神経を鎮め、痛みの軽減に貢献できると考えられています。
カテーテル治療の方法について
局所麻酔後に、手首または肘の内側の動脈からカテーテルを挿入します。カテーテルの太さは直径1mm以下と細いサイズです。カテーテルはX線透視を用いて、関節部周辺の患部まで挿入していきます。複数の動脈が肩関節に分布していますので、これらの血管を撮影し、異常に増加している新生血管を探します。その後、新生血管部位に10-70μmの結晶粒子を用いて塞栓(詰める)療法を行います。この結晶粒子のサイズは非常に小さく、用いる薬剤は抗生物質の一つです。
動脈を塞栓、つまり詰める治療後は、異常に増加した新生血管が見えなくなります。この状態を確認しカテーテル治療を終了します。治療にかかる時間は60分から90分程度です。治療後は1時間程度外来で休んで頂き、その後帰宅することが可能です(日帰り治療)。
久留米大学病院では九州で初めてこの治療法を、倫理委員会の承認のもと導入致しました(2016年10月現在)。
期待できる治療効果について
多くの患者さんは、カテーテル治療後約1週間で痛みの半分が消失します。その後、1か月後は痛みが70%程度消失し、3か月以降は90%程度消失すると言われています。また夜間の疼痛に関しては、より治療効果が得られると言われており、治療後3か月後にはほとんど消失すると言われています。さらに肩関節可動制限に関しても、カテーテル治療後は70%以上に関節運動域の改善が見られると言われています。
治療対象となる年齢について
当院では、適応年齢を20歳から70歳未満としております。
治療前に必要な検査について
採血による腎機能検査、肝機能検査、白血球数などを確認します。
また画像診断としてMRI検査なども必要です。
治療費用について
本治療は自由診療のため、費用につきましてはお問い合わせください。
問い合わせ先
※診療は予約制です※
事前にお電話でご連絡ください。
久留米大学病院 紹介予約センター(担当医 小金丸 雅道 こがねまる まさみち)
0942-27-5673(平日 8:30~18:00)