久留米大学医学部 放射線医学教室

海外留学記

留学報告

角 明子

2022年1月から6月までの半年間、アメリカ合衆国カリフォルニア州のスタンフォード大学(Department of Radiology, Thoracic Imaging, Stanford University)に留学させていただきましたのでご報告いたします。

1891年に設立されたスタンフォード大学は、カリフォルニア州北部のサンフランシスコ・ベイエリア地域内にあり、サンフランシスコから約60 km南東、Apple、Google、Facebook、アドビなどIT企業の一大拠点であるシリコンバレーの中心に位置しています。大学のキャンパスは広大で、メインキャンパスの正面から南に向かって左半分には主に文科系の学部、右半分には主に理科系の学部があり、School of MedicineやStanford Hospitalはこの右半分、西側にあります。病院は複数の建物からなり、中心となるStanford Hospitalは2019年11月に、Children’s Hospitalは2017年11月に新築された病院での診療が開始されています。以前の病院も使用されているものの、耐震性の問題で使用できる箇所が限られているようです。また、私のデスクがあったCenter of Academic Medicine (CAM)もCOVID-19パンデミックの中2020年4月から使用が開始された建物で、新しくとても快適に過ごせました。

留学中は、久留米大学でも研究テーマとしていた縦隔腫瘍、特に胸腺腫瘍について勉強させていただきました。スタンフォード大学の指導医でThoracic imagingのチーフでもあるDr. Leungから、スタンフォード大学の胸腺腫瘍の症例も収集しないかと提案され、将来的に久留米大学との共同研究を行うことを目標とし、まずはスタンフォード大学での約20年間の縦隔腫瘍の手術症例のリストを参照に対象症例の収集を行いました。しかし留学先はやはりアメリカ、最初からスムーズに行くことはなく、最初の1ヶ月は電子カルテとPACSへアクセスするための準備などに手間取り、実際に開始できたのは2月に入ってからです。初めて使用する電子カルテ・PACSと格闘しながら、症例を収集しつつ、検討する画像所見についてもdiscussionを重ねる日々で、留学中に目処がつくのか不安となったことは言うまでもありません。しかし、そのような中でもDr. Leungに的確に指導していただき、また、アメリカから何度もしつこく藤本教授に連絡をとりアドバイスを頂きながら、なんとか留学中に今後に繋がるところまで研究を進めることができました。今後は、Dr. Leungと藤本教授の指導の下に、久留米大学とスタンフォード大学の縦隔腫瘍に関する共同研究を進めていく予定です。

放射線科の読影室のある病院は、CAM buildingから徒歩で10分くらいの所にあります。COVID-19の影響で留学当初は病院へは行かずCAM buildingで仕事をしていました。COVID-19患者が減少してきた3月になり初めて読影室を訪れ、Thoracic imagingで研修しているresidentやfellow、radiologistと画像を見ながらアメリカと日本の医療の違いなどについて話をした事もとても印象深い思い出です。

皆さんもご存じの通り、遠隔画像診断の技術は日々発展しており、COVID-19でその発展が加速し、スタンフォード大学では在宅勤務で病院の画像の遠隔読影ができるシステムが構築されていました。さらにPACSのツールやZoomなどのweb会議システムを使い指導医とresidentやfellowとのコミュニケーションもとれており、技術のみならずそれを使用する医師のスキルもさらに進歩していると感じました。勿論、COVID-19パンデミック前のように対面での仕事・読影が良い、と言う放射線科医も多く一概にどちらがいいとは言えませんが、働き方の幅が広がるようなシステムの進歩はとても魅力的だと思います。

今回の留学は、COVID-19パンデミックの影響で1年延期となり、そもそも本当に留学できるのかと思いつつ準備を進めました。また、2021年12月年末から再度感染者が増加しつつある中での渡米となったため、アメリカに入国するまで本当に大丈夫か不安でしたが、アメリカ入国は拍子抜けするくらいすんなり通過し、入国後も特に行動制限はなくそれほど不自由はありませんでした。賑わいに欠けた所もあったとは思いますが、私にとっては穏やかな生活を送る事ができ、COVID-19前とは異なる楽しみ方ができたのではないかと思います。一方で、留学中にロシアのウクライナへの侵攻が始まり、物価上昇、約20年ぶりの円安ドル高水準、など目まぐるしく変化する世界を目の当たりにしました。学問もさることながら、アメリカの文化や考え方の他に、世界情勢を日本以外の地から経験できたことは貴重な体験となりました。

最後になりましたが、このような貴重な留学の機会を与えていただきました、関西労災病院の上甲先生、大阪大学の富山教授、藤本教授、安陪教授をはじめ放射線医学講座の先生方に心より感謝申し上げますとともに、留学の資金援助をいただきました久留米大学医学部同窓会、久留米大学放射線科同門会の諸先生方にもこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。今後もより一層精進して参る所存ですので、どうぞ宜しくお願い申し上げます。

CAM bulding
CAM buldingからの眺め Children's Hospital と無料シャトル
Stanford Hospital
Hoover Towerと図書館
Hoover Towerからの眺め1
Hoover Towerからの眺め2 病院・医学部

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