久留米大学医学部 放射線医学教室

海外留学記

Boston Medical Center 留学報告

久能由記子

ストーム後のBoston Medical Center の門 レンガ造りの建物と雪景色が素敵です

アメリカ東海岸のマサチューセッツ州にあるBoston Medical Center (BMC)の放射線科に2013年10月から2014年1月までの4ヶ月間、Short scholarとして留学をさせて頂きました。ボストンは広さ232km2 (久留米市と同等)、人口64万人(久留米市の2倍以上)で、独立戦争の舞台となった場所で、舞台となった建造物も数多くあります。また、ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学をはじめ世界に名だたる学校が数多くある場所で、他にもバークリー音楽大学などもあり、世界中から勉強や研究を目的に人が集まっており、アメリカの中でも特徴的な街でした。

Medical Center の敷地は広いので、周囲にはいくつもバス停があります

私は腹部領域、特に膵臓の画像診断に興味があり、普段の大学業務でも多く関わらせていただいています。内科や外科の胆膵グループの先生とも患者さんの情報を共有することも多く、そんな中でもっといろんな膵臓の画像診断について詳しく知りたいと思うようになっていったのが留学を考えたきっかけです。当初は膵臓の画像診断で有名な大学への国内留学を考え、勇気を出して動いてみましたが、なかなかすんなり進む訳ではなく、もう難しいかなという気持ちになっていました。しかし、ふとした時にフツフツと留学への思いを感じることはあったので、最終的に後悔しないようにと思って、再度留学に向けて準備を始めました。

国内留学を考えていた私ですが、先輩方とお話する中で言葉の壁や生活など心配なことはあるけれど、海外で勉強をしたいとも思うようにもなり、今回の海外留学に至りました。また留学先を考える中では多くの先生に力になって頂き、先輩の有り難さを心から感じました。

ボストンには大学付属病院もたくさんありましたが、その位置づけは様々であり、BMCは救急患者さんを多く受け入れています。そのためだけではありませんが、一番驚いたのはCT/MRIの撮影を24時間態勢で行っていることでした。入院患者さんは夜間に撮影したりもすると知り、なんとアメリカならではのシステムだと思いました。

Body reading room (CT/MRI/US)

留学期間中はbody reading roomでresidentと一緒にCT/MRI読影をしたりしましたが、放射線科の場合は画像という媒体があるおかげで、何か単語は出てくるので、少々間違っている英語でも何とか話していると色々教えてくれたりして、residentの方々にも大変お世話になりました。おかげで楽しく過ごさせていただきました。その他、US (通常は技師さんが検査を行い、放射線科医が所見の確認を行っていますが、所見が難しい時は技師 (technician), attending, residentでUSを行います) 検査を見学したり、毎日行われているresident conferenceや適宜行われているconferenceに参加したりしていました。

また、今まで行っていた膵臓perfusion CTのデータをDr. Sotoにも指導していただきながら論文作成を行いました。BMCで膵Perfusion CTを行っているわけではなく、彼は学外講演なども多く、忙しい中で、見ず知らずの私に論文の重要なポイントや書き方など教えて頂きました。また、Dr. NorbashやDr. Sakaiにも色んな面でお気遣いしていただき、皆様にとても感謝しております。全体を通して朝は早いですが、終業も17時過ぎですので、帰宅は18時頃とわりと健康的な生活リズムで毎日過ごすことができて良かったです。

Schedule

  • Resident conference (7:30〜8:30, 12:00〜13:00) 毎日
  • GI conference 適宜
  • Liver conference 適宜
  • Tumor board 毎月
  • M&M conference 毎月
  • Grand rounds 毎月
  • NERRS 毎月

論文作成

  • CT perfusion based visualization and Quantification of pancreatic carcinoma using 256 slice CT

12月にはシカゴ (飛行機で2時間10〜40分)で開催されるRSNAに参加しました。RSNA 2013には久留米大学からは長田先生が出席され、同門の内山大治先生ともお会いしました。久留米からは少人数ではありましたが長田先生の受賞や内山先生のoral presentationなど先輩方の勇姿を間近で拝見させていただき、私も頑張ろうという気持ちになりました。また、学会後にはBMCの酒井先生や藤田先生(自治医科大学からBMCに留学中)が講演される会に出席し、今まで留学されてきた他大学の先生やこれから留学したいという若い先生達ともお話をし、みんなの熱いエネルギーに触れ、久留米大学の若い先生達にも是非こういう機会を持ってもらいたいですし、設けられたらいいなと思いました。

抑えで投げる上原投手

課外活動に関しては、スポーツも盛んで、ちょうどワールドシリーズの時期でもありましたので、やはり一度は観戦してみようとフェンウェイパークで上原選手や田澤選手の投げる姿も観て、日本人というだけでかなり親近感を持って応援してきました。ボストンレッドソックスの優勝は6年ぶりらしく、なんと地元で優勝を決めたのは95年ぶりの快挙ということで、優勝パレードもとても盛り上がりました。他にもNBAやアイスホッケーも観戦し、小さな街でいろんな行事があっていて、いくら時間があっても足りない程です。

Boston Symphony にかかる小澤征爾さんの肖像画

Boston Symphony Orchestraも小澤征爾さんで有名ですが、私はBoston生活の最初頃にYo-Yo Maのポスターを通りすがりに見て、すぐにチケットを購入し行ってきました。仕事の後にこんな演奏を聴くことができるなんて幸せだな〜と実感し、12月にはPOPsといってクリスマスバージョンの演奏も聴きに行きました。やはりクリスマスにかける情熱というか、信仰心なのか、とても派手で楽しかったです。

ストームの日はあっという間に積雪してしまいました
公園の池がスケートリンクになっています

一番衝撃的だったのは冬でした。ボストンの冬は厳しいとは聞いていましたが、この冬は今までと比べても特に寒さが厳しかったようで、約20年ぶりの記録的な大寒波に見舞われました。北米大寒波のニュースが日本でも流れており、その節は日本からもメッセージを頂いたりして、ありがとうございました。12月も下旬になると定期的にストーム警報や外出禁止令が出て、一時はマイナス20℃程の日もありました(華氏表示のため、ニュースを見てもすぐにピンとはきませんが、寒いのは確かです)。吹雪きはじめると、あっという間にそこは雪国になっていました。しかし、慣れたもので夜中ひっきりなしに除雪車が運行し(けっこう音が大きかったです)、朝になると車道だけは車の運行に支障ないようになっていました。ただ、新雪が積もった風景は、九州ではなかなか見ることのできない景色でもあり、とても美しくて、心が洗われました。

そして、もう一つ12月23日に事故に遭い、救急車でBeth Israel Deaconess Medical Center (ハーバード系列)のERに運ばれました。まず救急隊やらたくさんの人がバーッと集まってきて、頭を打ってないと分かるとバーッと散っていき、その後はゆっくり(救急室で一人待ちぼうけ)と採血、単純Xp, 造影CT検査などを行われ、幸い骨折はなく、bone bruiseだったので足関節固定と松葉杖をもらって、帰ってよしと説明され、帰宅しました。その後は1ヶ月くらいの安静を指示され ( 結局、年末年始で2-3週間程は自宅療養が必要になりました )、療養しましたが、その間も皆さんが差し入れをもってきて下さって、とても有り難くて、見知らぬ土地で何よりも必要なのは人間付き合いだなとしみじみ思いました。今回、アメリカの現地医療を身をもって体験したことも大切な人生経験です。しかし、大変だったのはその後の保険屋さんとのやり取りでした。。。

BMCの他でも、ハーバード系列の病院へ留学・勤務されている放射線科医・他科の先生達、留学中の中学時同級生、久留米大学出身の先輩や現在の免疫学教室の溝口教授ご夫妻、滞在先のお家で会った友人、研究者交流会で出会った方々など多くの日本人とも出会い、交流できたことも安心して充実した生活が送れた大きな要因と思います。

留学期間の中ではRSNA、Holiday seasonや思いがけない事故・ケガなどあり、結果的にBMCに通った期間は少し短くなりましたが、様々な経験や素敵な出会いがあり、貴重で素晴らしい時間を過ごせたことを大変感謝しています。

新しい研究をしたくて留学をしてみたいという方はもちろん、少し視野を広げたい、海外の友人を作りたいなど考えていてもなかなか勇気がでない方などに今回の報告が少しでもきっかけになればと願っています。その際は少しでも若い先生達の力になれればと思っています。

このような貴重な経験をさせていただきましたことを、安陪教授、早渕前教授、医局長、並びに放射線科医学教室の先生方に心より感謝申し上げます。また、放射線科同門会の諸先生方、久留米大学医学部から留学資金の援助をしていただきましたこともこの場をおかりして深謝いたします。

久留米大学医学部放射線医学教室
〒830-0011 福岡県久留米市旭町67
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