メイヨークリニック留学報告
長田 周治
アメリカのミネソタ州にあるメイヨークリニックの放射線科に平成19年12月から20年9月まで、9ヶ月間visiting clinicianと言う立場で留学しました。メイヨークリニックは、ミネソタ州ロチェスター市に本部を置く総合病院で、その他にフロリダ州とアリゾナ州に支部があります。
ロチェスター市の人口は約10万人ですが、そのうちメイヨー医療関係者は3万人です。 メイヨーキャンパスと言われる1500万平方フィート(東京ドームの約30倍)の敷地にビル群が並んでいます。メイヨークリニックには800床のMethodist hospitalと1200床のSt. Mary's hospitalがあります。合わせて手術室は86室、手術は年間4万4千件行われていますが、在院日数平均たったの4日です。したがってメイヨークリニックの周囲には、外来患者さんやその家族が宿泊するためのホテルが多く、ボランティアが運営する宿泊施設も用意されています。
(写真3)外来棟は太陽光が降り注ぐ空間になっています。ここにはピアノがあり、ボランティアによるコンサートがよく催されています。
(写真4)放射線科には、スタッフ166人、フェロー20人、レジデント44人在籍。骨軟部グループにはスタッフが10人、フェローが3人、そしてレジデントが3人ローテーションでまわってきます。 留学中は骨軟部専門の放射線科医であり、MRIのチーフでもあるDr. Amramiに指導して頂きました。彼女は、日常業務に加え多くのプロジェクトを抱えながら、多忙にもかかわらず、私の意見もじっくりと聞き、尊重し、そしてよきアドバイスをして下さる素晴らしい研究者・指導者でした。
MRIは研究用も含め全部で28台 (1.5Tが23台と3T が5台)ありました。骨軟部専用に使用されるMRIは4台(1.5Tが3台と3Tが1台)でした。 骨軟部のMRI読影室は3部屋あり、各部屋でスタッフ1名、フェロー1名、レジデント1名の3人一組で読影を行います。MRIの撮影は午前6:30から始まり、午後3:30には終了します。読影は午前7:30からはじまり午後4:30には終ります。日本と違い、アメリカは総じて始業時間が早く、その分、早く終業し、家族との団欒の時間を大切にします。骨軟部症例は1日に40-50例ほど撮影され、各部屋で15-20件程読影することになります。読影は全てディクテーションで行われ、PC上で患者情報や他の画像、病理結果など確認できます。
4日/週(研究日以外)
【研究】
1.3T MRIを用いてmagnetization transfer contrast subtraction imageによる膝蓋軟骨の描出能の検討 (シークエンスによる信号ノイズ比、コントラストノイズ比や軟骨欠損の描出能の違いなど)。
2.3T MRIを用いて膝蓋軟骨におけるmagnetization transfer ratio(MTR)を年齢, 部位, 軟骨軟化症のgradingに基づいて検討。軟骨はコラーゲンの減少や構築の乱れに伴いMTC効果が低下するため、MTR mapを作成することで視覚的にコラーゲンの状態を見ることが出来、ROIを測定することで定量化することも可能。
3.3TMRIでbirdcage wrist coilを用い、描出能の検討を検討。更にMTR map, ADC map, FA mapを作成し、年齢や部位におけるそれぞれの正常値、また手根幹症候群患者との違いがあるかなども検討。
平成20年5月にトロントで行われたSMRT(section for magnetic resonancetechnologists)にて中央がProfessor Amrami, 左がDave Stanley (GEのcollaboration leader) タイトルは"fesibility of MTC subtraction imaging of the knee at 3T"幸運にもclinical focus poster部門で1st placeに選ばれました。
アメリカ人は、本当に陽気で親切でした。目が合うと、当然のように笑顔で挨拶。"お先にどうぞ"といった感じでドアを開ける等々・・・。他人に対する思いやりや、接し方など、アメリカ社会の素晴らしい文化のようなものに触れる事が出来ました。
留学中、川嶋先生ご夫妻には、大変お世話に感謝の気持ちでいっぱいです。又、ロチェスターに滞在中の多くの日本人と知り合いになり、情報交換が出来た事も、充実した留学生活を送れた大きな要因となりました。 ミネソタ州の大自然が気に入り、週末によくミシシッピーバレーまでドライブしました。広大な畑や緑の草原を貫く真っ直ぐな一本道を車で走る度にアメリカ大陸の雄大さを感じました。